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TPPと著作権:韓国著作権局インタビュー
かねてからの念願だった、
韓国著作権局(KCC)を訪問し、
FTAにまつわる著作権法改正の影響について、
インタビューをしてきたので報告したい。

KCCは韓国著作権法第112条に定められた組織で、
著作権にまつわる、いろいろなことを担当している。
日本にはこれに相当する組織はなさそうなのだが、
文化庁著作権課やCRICの仕事の一部を包含したような、
100名弱のまあまあ大きな組織になっている。

もとはソウルにあったのだが、
政府の首都機能分散政策の一環で、
2013年に韓国南部、
プサンからバスで1時間ちょっとの地方都市
ジンジュ市に移転している。
ソウルには教育部門が残るだけだという。
多くの人が単身赴任で、
ソウルまで高速道路で4時間半かかるという。
組織ごと島流しのような待遇が気の毒で、
職員のみなさんは家族への説明がたいへんだったろうな。

まあ、それはさておき、韓国は日本でいま騒がれている
TPPにまつわる著作権3点セット
(保護期間延長、非親告罪化、法定賠償金)を、
韓国ーEU(2010年署名、2011年暫定発効)と
韓米FTA(2007年署名、2012年発効)のからみで
すでにやっている。
その経験から学びたいというのが、インタビューの趣旨だった。

インタビューは韓日の通訳を通して行った。
ここに書くことはわたしと通訳の理解力の範囲内でのことであり、
その正確さは保証できず、傍証のない部分もあるので、
くれぐれもそのつもりで。

まず、ふたつのFTAがらみで大問題になったのが、
保護期間延長と、一時的蓄積(キャッシュ)に複製権を認めることだった。
それはもう、たいへんだったと担当者はいう。

保護期間延長については、
まず韓ーEUのFTAに入り、
同様のことが韓米FTAにも入った。

日本の事情とは違って、業界団体が延長に積極的だったわけではないという。
少なくとも「もう決まったこと」と、
あきらめることでもなかったそうだ。

国民への説得のポイントはふたつあった。

第1は、将来的な国際収支にプラスになるということ。
本当にそうか?とも思うが、
それだけK−POPなどの輸出に
50年後も自信があるということか。

第2は、すでに著作権が切れているものは延ばさないこと。
適用の不遡及は当然のことなので、
これが説得ポイントだったというのは少し妙に思えた。

また、両FTAでは協定発効から延長実施まで2年の猶予期間が認められた。
この猶予期間を延ばす交渉をしたそうだが、
うまくはいかなかったそうだ。
そしてその2年間にヘミングウェイやヘッセの権利が切れて、
延長のインパクトを和らげられるというロジックも使ったそうだ。

著作権の国際収入は、FTA全体の1%くらいなので、
国家的には大きな問題にならないともいった。

デジタル・アーカイビングへの影響については、
韓国では2000年代なかばの法改正で、
著作権の残る所蔵資料をデジタル化する権利が
すべての公立・大学図書館に認められているので
影響はないとの意見だった。
(国立でなくても配信までできるのかは聞きそびれた。)

孤児作品対策としては、
裁定制度を使いやすくする方向で考えているとのことで、
それは日本とおなじ。

一時的蓄積(キャッシュ)に複製権を認めることにも激しい反対があったが、
適法な利用にともなうキャッシュは免責することで乗り切ったらしい。
ただ、適法か違法かユーザーが認識できない場合があり、
その点はあいまいさが残る。
一般的には、私的使用の場面では問題にしないという
共通理解があるとのこと。

非親告罪化については2段階の改正があった。
最初は2006年改正で、営利かつ常習性のある侵害を非親告罪にした。
これはFTAとは関係なく、世論の高まりを受けてのこと。
2回目はFTAにともなう2011年改正で、
商業的規模の侵害を非親告罪にした。
商業的規模とは、営利のためか、
あるいは常習性のあることをいい、
100万ウォン(10万円)以上の被害という基準もあるらしい。
ただ、100万ウォンの基準は明文化されたものではないともいっていた。
(このあたりは、少し理解が及ばなかった。)
(2016.2.2一部修正)

つぎの点が重要だ。
著作権侵害を警察が独自に動いて立件した例が、
2013年には約25,000件あったという。
(2016.2,2一部修正)

にわかに信じられない衝撃的な数字だったので、何度も確認したのだが、
警察独自の活動による立件だと、担当者はいった。
仮に通報を受けての立件が混じっていたとしても、
日本とくらべて対人口比でみても、ケタ違いに多い。

ここの情報によると、日本での著作権法違反の検挙数は、
2013年で240件に過ぎない。
韓国の人口は日本の半分以下の約5000万人だ。

どのくらいの勢いで増えたのかは聞いていないが、
日本の近い将来もそうなる危険性を感じた。

ちなみに、韓国で立件されたもののうち、
起訴されたものが約2,800件で、
ほとんどは略式起訴による罰金刑。
審理まで進んだものが約80件、
実刑になったのが1件。

(ここからは、あとで通訳さんに調べてもらったこと)
韓国では著作権者と関係ない法務法人(ローファーム)が、
侵害者をみつけては警察に通報するぞと連絡し、
「合意金」を要求するケースが増えている。
「合意金」の相場は、相手が小学生なら50万ウォン(5万円)、
大人だと100万ウォン(10万円)だそうだ。
いわゆるコピーライト・トロールで、
権利者でもないひとの「脅し」が現実味を持つのは、
非親告罪だからこそだ。
(2016.2.2一部修正)
(ここまで、あとで通訳さんに調べてもらったこと)
(2016.1.29追記:この種の「合意金商売」は、
著作権者やその代理人がしている場合も多く
非親告罪のせいばかりではないこと、
軽微な侵害では起訴されないことがあるのに
事情に詳しくない若者が合意金を支払ってしまうこと、
警察が合意金支払いを促して問題になったことがあること、
こうしたことに巻き込まれて若者が自殺したケースがあること、
などを張睿暎氏よりお教えいただいた。)


ちょっと脇道にそれるが、
日本では違法ダウンロードがすでに刑事罰化されているので、
これがTPPで非親告罪になれば
日本ではもっとひどいことになるかもしれない。
日本で刑事罰化されたときには、これは親告罪だから大丈夫という
言い訳を政治家のみなさんが盛んにしていたことを忘れちゃいけない。

韓国の話にもどそう。
あちらではwebhardでのファイル公開やp2pの利用者が多く、
ユーザーが意図せず違法アップローダーになってしまうことがある。

それから、なるべく刑事事件ではなく民事に誘導しているとか。
(通報があったときに、なるべく民事で争ってもらうようにする、の意か。)

法定賠償金制度のトロールへの影響も気になっていたのだが、
アメリカのように上限額と下限額を決めているのではなく、
韓国は上限額を決めただけなので影響ないという。
実際の裁判では、実損害額の賠償しか認めていないそうだから。
(このあたりは、日本が参考にできるだろうか。)

フェアユース規定は、FTAによる法改正のときに導入した。
FTAでは保護ばかり強くなるので、
利用も強くしないとバランスが取れないという判断が尊重された。

フェアユースを推進したのは、KCC自身と、
「進歩ネット」(当時は別名称)という市民団体だった。
後者は日本でいえばMIAUだろうか?(がんばれ、みゃう)。
KCCは主として法の専門家集団の立場から、
フェアユースの必要性を訴えたそうだ。

考えてみれば、KCCのように公的な立場から
法律的な判断をいえる機関が日本にはない。
文化庁は役所だし、
CRICには権利者団体の資金が入っているから
公的とはいいきれない。

フェアユースの実際の運用を聞いてみると、
やはりまずは個別制限規定で判断され、
それでカバーされないときにフェアユースで争うことになる。
フェアユースかどうかが問われた裁判は、まだないそうだ。

知り合いの韓国人研究者に聞いても、
フェアユースが入ったことはほとんど認知されていない。
制度の定着はまだまだ時間がかかりそうだ。

最後にACTAであるが、
メニューがだいたいTPPに入っているので、
署名以後の、担当者の関心は落ちているとのこと。
今後、批准する予定もないそうだ。
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水木しげる先生のこと
話したことはないけど、みたことはある。

10年くらい前に、京都の六道珍皇寺の「迎え盆」行事のとき、
小野篁の像の前に立っていらっしゃるところをみた。

「とうとうみちゃった。」
「ぼくにもみえた。」

この世のものでないものをみてしまったみたいな、
そんな気持ちだった。

鬼太郎に出てくる妖怪の特徴を一生懸命覚えようとしていた、
子ども時代のことが思い出される。

おつかれさまでした。
TPPと著作権 大筋合意を受けてこれから起こること
TPP交渉が5日に大筋合意に達したと発表があった。ぼくの基本的なスタンスは、著作権のような文化のあり方に直結することを貿易交渉のなかでやることに大きな違和感があり、ましてや秘密交渉ならなおさらだということにある。なお、交渉全体をどう評価するのかは重要な観点だと認めるが、それはぼくの能力を超える。そのうえで、これから起こるであろうことを書いておく。ただし、現時点では不確かな予想も混じってるし誤解もあるかもしれないので、その点は注意してもらいたい。

まず、いまの段階ではまだ「大筋合意」なので、条文を確定する作業がまだ残っている。これにはあと1ヶ月以上はかかるのではないだろうか。大急ぎでやったとして確定は11月初旬。これが遅れると後のことが全部遅れる。

条文が確定したら「署名のための開放」が行われる。それから各国がそれに署名して、それぞれの国内手続きに入る。米国大統領が署名(これは批准のことではない)するには、貿易促進権限法(TPA)によって90日前までに議会に通知しなければならない。そうすると、米国の署名は早くて2月初め。たぶん、他の交渉参加国もそれと同時に署名するだろう。米国での条文の全文の公開については、署名の60日前までにネット公開することをオバマが義務付けたらしいので、12月初め頃にはあきらかになるだろう。
(2015年11月5日追記:本日、現時点でのテクスト全文がニュージーランドから公式に公開された。ただしまだ確定条文ではない。)
(2015年11月6日追記:5日にオバマは署名を議会に通知した。これにより、米の署名は早くて来年2月3日になった。)
(2016年2月4日追記:本日、参加12カ国がニュージーランドで署名した。)

署名してから米国内での実施法案をまとめるのに最低1ヶ月として、審議入りが3月初め。そして今回オバマにはTPAが与えられているから、議会は90日以内に法案を全部受け入れるか、全部拒否するかのオール・オア・ナッシングの判定を下すことになる。TPPをめぐっては米国内でも意見が割れているので、すんなり通るとはとても思えない。米国議会で否決されるシナリオも考えられないわけではないが、まあ可能性は低いだろう。時間をいっぱいいっぱい使うと米国の批准は5月末くらいか。

米国に忠実な日本としては、それまでに批准しておきたいところなのだろうが、そうはいかない事情がある。来年7月の参議院議員選挙である。TPPが来年の通常国会後半の中心になることはほぼ決定的だが、集票力の高い農業団体には不人気な内容を含んでいる。与党の見込みどおり、来年夏までに国民は安保法案のことは忘れるとしても、支持率回復は気になるところなのでTPPの審議あるいは採決を選挙後に先送りする可能性もある。

日本の批准がいつになるのかは別にして、TPPに合わせた国内法の改正に向けた動きは、すでにはじまっている。たとえば、10月21日にマンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟が著作権侵害の非親告罪化について、赤松健氏、玉井克哉氏、福井健策氏、コミケ関係者らにヒアリングするという情報がある。

ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)の例からみても、TPP批准審議に入る頃には、必要な国内法改正は終わっているだろう。それはおそらく、審議会などを通さない方法で来るだろう。そうなると、ロビイング力のある業界団体の、ほぼ独壇場になる。さらに、TPP関連法案がまとめて審議されるだろうから、著作権のような票にならない分野は審議時間も割かれず、報道も少ないという状況が予想される。それにいまのような国会勢力図だと、与党の思うままの法案が通る。日本が提唱したACTAの場合は秘密交渉にしたことが致命傷になって欧州で否決され、事実上お蔵入りしたわけだが、ACTA以上の秘密交渉だったTPPを批判できる市民力は、残念ながら日本国民にはなさそうだ。
(2015年11月5日追記:昨日、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会があり、TPP対応の法改正についてヒアリングが行われた。急ぎで審議会審議をする方向になったようで、ここでの予想は幸い外れた。)

それよりも前に、最終条文の日本語訳がいつ公開されるのかが問題だ。おそらくすでに翻訳にとりかかってはいるのだろうが、米国での公開よりは早くはならないはずだとすると12月頃だろう。ちなみに官邸からは10月5日に「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要」なる文書が公開された。この程度の文書をどうしてもっと早く出せないのかと思う。知財に関しては、Wikileaksなどのリーク文書と内容に食い違いはなく、リークの正しさは証明された。
(2016年1月8日追記:昨日、昨年12月末時点の条文の暫定仮訳が正式公開された。)

ちなみにこの「概要」だが、日本向けにカスタマイズされたものになっている。米国通商代表部は大筋合意に合わせてTPPのサマリーを公表し、またTPPのサイトを作ったようだが、現時点で日本から出ているものほど詳細な情報はみつけられず、その点では日本政府は情報公開にがんばってくれているのかもしれない。

しかしそれにしても、訳語選択から生じる微妙なニュアンスの差違には気を付けたほうがよい。たとえば「概要」の非親告罪化の部分(31頁)には、「故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない」とあるが、「収益性に大きな影響」の「大きな」にあたる表現が、最新リーク文書(2015年5月時点テキスト)注251にはみられない。この注はリーク文書時点で確定していると読めるのだが、最終条文にほんとうに「大きな影響」の表現が含まれるか要チェックである。その「大きな影響」を具体的にどう法律に落とし込むのか、大きな疑問が残るのだが。

このほか、「概要」32頁の「知的財産権等使用料(受取・支払)の推移」グラフでは、日本は大きな黒字になっているのだが、これは特許を含めた数字であって、こと著作権料に限っては福井健策弁護士が何度も指摘してるように、日本は大赤字なのだ。ミスリーディングを誘うグラフなので要注意。

さて、TPP交渉国が協定を批准したとして、それですぐに発効するわけではない。そこで気にしなければいけないのは、2月12日のエントリに書いた、米国議会のサーティフィケーション・プロセス(承認手続き)のことだ。サーティフィケーション・プロセスとは、交渉参加国の法改正が米国の要求を満たしていると承認するプロセスのことで、それが完了するまでは米国の国内法上の手続きを終えたことを相手国に通知することを保留するらしい。そういうプロセスがもし存在するならば、日本の国内法の改正案を事前に米国に提示して「これでよろしいでしょうか」的なやりとりが発生するという、情けないことも起こりえる。もちろん、そんなことは表沙汰にはできないだろうが、ありえることだ。

さて、「概要」36頁にはTPPが発効する条件として、「全ての原署名国が国内法上の手続を完了した旨を書面により寄託者に通知した後60日後」か、あるいは「2年以内に全ての原署名国が国内法上の手続を完了しない場合、原署名国のGDPの合計の少なくとも85パーセントを占める少なくとも6か国が寄託者に通知した場合には、本協定は上記2年の期間の経過後60日後」に発効するとある。10月7日の朝日新聞の報道によると、米国の名目GDPは62.1%、日本は16.5%だから、日米のどちらかが寄託者(今回はニュージーランド)に手続き完了を通知することが、TPP発効の必要条件になる。

そこで気になるのが、やはりサーティフィケーション・プロセスとの関係だ。仮に米国が他国の国内法改正の水準を見極めるまで通知を遅らせたら、その間はTPPは確実に発効しない。(しかし、相手国の法律はすでに変わっている。)それでは、米国はいったいいつまで通知を遅らせることができるかとなると、そこにオバマの任期がからんでくる。次期大統領が誰になって、そのひとのTPPへのスタンスがどうなるかはわからない。有力候補のヒラリーは、あきらかにTPPには後ろ向きだし、彼女が当選したらTPP再交渉というシナリオもありえる。米政権はオバマの業績として任期中にTPPの発効を確実にさせたいところだろう。そうなると、2016年11月8日の大統領選挙前、遅くとも2016年中にはサーティフィケーション・プロセスを完了しなければならない。

それがまた、日本の法改正・批准日程に跳ね返ってくる。仮に2016年夏の参議院議員選挙後までTPPのことは先送りにするにしても、まじめな与党は秋には臨時国会を招集して、米国にあわせて2016年内に決着させようとするだろう。そんなに急ぐ必要はぜんぜんないのだ。むしろ米国に先に国内手続き完了を寄託者に通知してもらい、サーティフィケーション・プロセスによる米国からの横やりを無力化し、「親分」の顔色をうかがうことなくじっくりと国内議論をすればよい。つまり、日本のTPP対応は米国大統領選の結果などをみながら2017年の通常国会までかけて、何が国益なのかをじっくり考えるのがいい。日本が通知しなければTPPは発効しないという強みがあるうえ、5年も交渉してきたことが半年や1年遅れたとして、それが経済で大打撃を受けるわけでもないのだから。

いずれにしても、TPPに入るための著作権法改正への動きはもうはじまっている。保護期間延長も非親告罪化も法定賠償金も過去の審議会では導入が見送られてきたものばかりだ。政治家主導の立法は、熟議がないので危険だ。先日改造された第3次安部内閣で著作権を主管する文部科学大臣になった馳浩氏は、業界のいいなりになって違法ダウンロード刑事罰化を推進した中心人物だということも、忘れてはいけない。

(2015年10月10日 文言を一部修正)
(2016年4月20日追記:TPP批准案と関連法案は4月5日に衆議院で審議入りしたが、黒塗り文書問題やTPP特別委員会の西川委員長による「暴露本」出版計画などで紛糾していたところへ熊本地震がおこり、政府は今国会での批准を断念するようだとメディアは伝えている。)
(2016年10月18日追記:TPP承認案と関連法案は、10月14日に衆議院の特別委員会であらためて審議入りした。)
「ディズニー美術展」をみる
京都の岡本光博さんの画廊・KUNST ARZTで開かれた
「ディズニー美術展」へ行ってきた(昨日終了)。

「ディズニー」と付いているが、D社とは関係ない催しだ。
D社のキャラクターや商標を題材に、
知財とアートの関係を問い直そうという企画とみた。

5人のアーティストが出品していたので、その感想を書いておく。

まず、壁を大きく占めていたのが、
福田美蘭さんの新作「誰ヶ袖図」。
金壁画を模したような背景で、
衣桁や屏風にDアニメのキャラクターたちの衣装が掛けられている。
そして屏風に描かれた風景は、どこかでみたような……。
寓意が何重にも仕込まれていて、
実に多様な読み解きができる。
いつものことながら、すごい力量だと、しばし立ちすくんだ。
どこかの美術館が買いそうだということで、
そのうちみなさんも目にする機会ができるでしょう。

おなじ部屋には画廊のオーナーである岡本光博さんによる、
某鼠の種々のぬいぐるみを解体してアレンジした作品があった。
どれもけっこう違う顔をしているのだけど、
そのどれもが、たしかに、あの鼠だと認識できる。
そしてそれを「退治」しようとするアーティスト。
その闘いの行方やいかん。

その部屋のもうひとつの壁には、
ピルビ・タカラさんの作品がビデオ上映されていた。
シンデレラのコスプレで、
ユーロ・D・ランドに入場しようとするアーティスト。
それを阻止しようとする警備員。
その様子を、こっそり撮影した作品だ。
「夢の国」に働く知財のコントロールを暴いた作品なのだが、
ぼく的にはいまひとつ、感じるものが弱かったかな。

ふたつ目の部屋にはおふたりの作品があった。
まず高須健市さんの作品は、
D社のマークをひっくり返したものが、
商標登録されるか(出願中)、という作品だ。
類似商標の臨界点を試すものとして、おもしろい。
出願結果はどうなるのだろうか。

最後は、人気上昇中の入江早耶さんによる「消しかすアート」。
D社の絵本を消しゴムで消したかすを集めて、
(つまり、絵本から色を取る感じ)
練って粘土状にしたものを使って、
キャラクターを合体させた精巧な造形をしていた。
みていると、触ってみたくなる質感だった。
入江さんに聞いてみたら、
展示している状態は、まだできたてで、とても柔らかいのだが、
時間が経つとだんだん固まってくるのだとか。
そのフラジャイルさと、
ときとともに質を変えていくという楽しみが、
所有欲をそそる。

夜は、関係者が30人ほど集まって、
いろいろ意見交換をした。
結論的には、D社って、アートには意外と理解あるのかもね、
ということになった。
(でも、D社本体と日本の運営会社とでは、
考え方が違うかもよ、という意見もあった。)

岡本さんは、画廊が潰されるかも、という覚悟をしてたみたいだけど、
会期終了までは、さしたることはなかったそうだ。
(米国からD社のひとが、みに来られたそうだが。)

展示の概要はこちら。
http://kunstarzt.com/exhibition/VvK/111DisneyArt/DisneyArt.htm
新聞記事は私有財か公共財か
先日、ある大手新聞の記者さんと、
取材哲学のような話になった。

その記者さんいわく、
自分たちが書く記事は公共財なのだ、
記者ならだれもが、そういう意識でやっている、
取材で相手を1時間も拘束しても、
手土産ひとつ用意しないのは、
その記事が公共のものになるからなのだという。

(いや、別に手土産がないとぼくが文句をいったのではない。)
(新聞取材に応じるとずいぶんとギャラがもらえると
思っているひともいるようだが、実際、ビタ一文もらえたことはない。)

著作権問題にどっぷり浸かっていると、
新聞記事という情報財は私有財だと、
いつのまにか信じて疑わなくなってしまっていた。

そういう意味で、その記者さんの取材哲学は衝撃的だった。

だけど、おなじ新聞社でも法務のひとに聞けば、
とんでもない、弊社の記事には著作権があり私有財だと、
まちがいなく答えるだろうな。

こういう、現場と法務の意識の差は、
いたるところであるんじゃないだろうか。
TPPによる著作権の非親告罪化、するもしないも矛盾しない
ついさっきのことだが、こんどは47NEWSの「TPP、著作権公訴を義務付けず 日本が導入に難色」という記事で、「……著作権が侵害された場合に被害者の告訴がなくても政府が公訴を提起できる制度を、参加12カ国に一律に義務付けない方向で調整していることが11日分かった」と報じられた。

これは日本は非親告罪化をしなくてよくなったといっているのだと読めるが、2月11日のお昼のNHKニュース「「非親告罪化」とする方向で調整を進めている」というアナウンスと真逆にみえる。

NHKは非親告罪化するといい、47NEWSは非親告罪化しないという。

しかし、これらのニュースは矛盾しないというのが、ぼくの読みである。

なぜなら、NHKニュースでは「適用範囲について各国が判断できる余地を残す案が示された」とある。つまりそれは、非親告罪化の範囲に裁量の余地が残されたということであり、それは国の事情によっては非親告罪化しない部分を残すことが可能になったということだと考えられる。

一方、47NEWSでは非親告罪化を「一律に義務付けない」ということなので、それは限定的に非親告罪化を導入することだともいえる。

つまり、おなじソースのニュースを、NHKは非親告罪化することになったと伝え、47NEWSはしなくてよくなったと伝えたのではないだろうか。

ちなみに、47NEWSでは「日本はTPPによる著作権の現行制度を変える必要はなさそうだ」とあるが、保護期間延長や法定賠償金のこともあるので、それは言い過ぎだ。
TPPと著作権 これから起こること、米国議会のちゃぶ台返しはあるか
TPP交渉の著作権部分について、2月2日の日経新聞で、保護期間を70年にする方向で調整に入ると報道があり、2月11日のお昼のNHKニュースのトップニュースで、非親告罪化を導入する方向で調整に入っていると伝えられた。

内容はリーク文書通りであり、多くのひとが予想していたことであり、たいして驚きもなく、誤報を疑う根拠もない。しかしこうも予想通りの流れがみえてくると、米国のいうことを聞くだけなら誰でもできるぞと思うひとも多いだろう。これだけ譲って代わりにいったい何を勝ち取っているのか、それがさっぱりみえてこないのが問題だ。

NHKの報道では、営利目的などの著作権侵害は原則として非親告罪化するが、適用範囲については各国に裁量の余地を残すということで、日本も受け入れたという。だが、ちまたで心配の声があがっている同人誌販売などは、営利目的とみなされうるものなので、非親告罪化の原則が適用される覚悟をしたほうがよい。

ちなみにこれまでのリーク文書で、非親告罪化は「コマーシャル・スケール」の侵害に限るという議論があったのは知られている。しかし「コマーシャル・スケール」をどう定義するかについては、各国の意見がわかれていた(邦訳は@fr_toenさんのブログ第QQ.H.7条)。非親告罪化の適用範囲に裁量の余地が与えられそうだから、日本は「コマーシャル・スケール」すなわち「営利目的」を独自にぐっと狭く解釈してクリアできるかもと考えたのだろう。

ところが、それは米国(すなわちステーク・ホルダーである米国大企業、著作権の場合はディズニーなどハリウッド映画産業)が許さず、TPP妥結後に「ちゃぶ台返し」にあう危険性がありはしないかと、ぼくはみている。それは米国議会での「承認手続き」のことである。「承認手続き」とは、FTA交渉で妥結した内容にかかわらず、相手国の国内法や規制緩和が米国議会が認める水準に達していない場合に、米国は協定を発効させないことができるものだ。つまり、妥結した交渉テキストに沿うと考える国内法改正を相手国がしたところで、それが米国議会の要求を満たすものでなければ協定は発効しないし、再交渉して他国の法改正に干渉することも辞さない。より詳しいことはTPP: NO CERTIFICATIONのページ(7番)に情報がある。そこにある情報のウラは完全に取ってはいないのだが、考えさせられる内容を含んでいるのでぜひ読んでみて、みんなで真偽のほどを調べてみてほしい。

つまり、「承認手続き」の段階で、米国がほんとうにどこまで「コマーシャル・スケール」の解釈の独自性を認めるかが問題だ。この点について2013年のリーク文書中での米国の要求は、何らかの価値あるものの受取(期待を含む)は「コマーシャル・スケール」とみなすという、たいへん厳しいものだった(第QQ.H.7条およびその脚注あたり)。これだと同人誌1冊でも売ろうとするだけで(実際売ってなくても)引っかかるだろう。これがハリウッド映画産業の要望により近いものなのだとすると、日本がそれを緩く解釈しようとしたら、それなりのプレッシャーを受ける可能性がある。

とはいっても、オバマが求めているファスト・トラック(TPA)法案が通れば、議会の「承認手続き」段階での修正要求など心配しなくてもよいのではと思うかもしれない。TPAとは、政権が結んだ協定を議会が一括・無修正で承認することである。この点について、先に紹介したTPP: NO CERTIFICATIONは、たとえファスト・トラック権限が大統領に与えられても、米国議会はTPPの最終条文の変更を要求できると警告している。「承認手続き」は政権が結んだ協定の「修正なしの承認」か「否認」かを議会が選択できるものだ。いわばTPAがあれば交渉結果はオール・オア・ナッシングになる。逆に言えばTPAがなければ交渉テキストは妥結後であってもいくらでも変更可能とするのが米国の考え方で、この点は日本とは大きく違う。だが、米国の政権としてはせっかくまとめた交渉を議会に否認されてはたまらない。相手国の国内法改正や各種の措置が多くの議員(つまり彼らへの献金者である大企業や圧力団体)を納得させられないと悟ったら、TPPの再交渉という事態も予測できる。米韓・米コロンビア・米パナマFTAをめぐる、TPA、再交渉、議会承認のゴタゴタについては、JETROのレポート(14ページあたり)を参照。

今後の注目点としては、まずはTPA法案が米国議会で通るかどうかである。これについては、TPAを求めるオバマに対して身内の民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員(前職はハーバード・ロー・スクールの教授で、ウォール・ストリート選挙運動の理論的指導者のひとりとされる。このひとには次期大統領候補の呼び声もある)らが反対し、両院で多数派をしめる共和党のオリン・ハッチ上院財政委員会委員長(このひとは、著作権侵害を誘発するおそれのある機器の製造・譲渡に刑事罰をつけようとして失敗したことがある)らが推進を表明する、わかりにくい状況が生まれている。まあ、議員の独立性が高いという点では、ある意味健全なのかもしれない。とくにウォーレン議員はTPPの秘密交渉を批判していたし、最近はISDS条項に懸念を表明するなど、その主張はまっとうだと感じている。

国内の動きとしては、もし日米交渉がまとまるようなことがあれば、TPP本体の行方如何にかかわらず、著作権保護期間の70年への延長、非親告罪化〔法定賠償金もか)の流れが一気に具体化していくだろう。これらはすでに米国との約束で決まったこととして、問答無用の改正が、審議会を経ない議員立法でされる危険性が高い。そうさせないためには、あるいはよほど変な方向に行くことを阻むためには、いまから議論を盛り上げていかないといけない。保護期間ならば登録した著作物だけを70年に延長できることにする、非親告罪化は軽微な侵害は問わない、累犯に限る、デッドコピーに限るなどの細かなルールメイキングは可能である。また、近年の審議会で権利者団体によってつぶされたフェアユース導入を再度考え直すなど、総合的なバランスを取った改正にしないと、著作権法は極めて危険な文化・情報統制法に成り下がってしまうだろう。それから、同人の世界がつぶれてしまうよという議論はおそらく、対米国には無効だろう。なぜなら、米国の映画産業にとっては日本製マンガ・アニメは競争相手であり、その底辺を支える同人界などつぶしてしまって、米国製の映像娯楽だけを消費してもらいたいのだと邪推しても、あながちおおはずれではなかろう。その証拠に、フェアユースを入れろという要求を米国は決してしない。

それにしても、文化にかかわる法律の方向性を外国との秘密交渉で決めてくるという手法は、どう考えてもおかしい。その点は繰り返し主張したい。しかも、70年保護も非親告罪化も数年前の国内議論で導入を見送った経緯のある、いわく付きの条項だ。著作権を譲って何を得たのかもはっきりしないようでは、もはや交渉ではなくただの追随だといわれてもしかたあるまい。
電子ブックサービスと図書館の蔵書
Intellectual Property and Free Trade Agreements
in the Asia-Pacific Region

という、14,000円もする本が出ていた。

近頃の英語の学術書によくある値付けとはいえ、
高すぎると思ったけど、
新しい本のせいか、まだどこの大学図書館にもないみたいだし、
この辺のことはちゃんと勉強したいと思って、
自腹を切ってamazonで買った。

届いた本のSpringerのロゴをみて、
あー、やってしまったと思った。

ぼくの所属機関はSpringerのeBookを契約しているので、
ここの本のPDFは個人負担なしで手に入るのだった。

案の定、eBookにあって、PDFも入手できた。
iPadに入れたら紙の本より軽いし、全文検索もできる。

いい世の中になったとは思う半面、
電子ブックで入手できる本は、
図書館は買わなくなってきていることが、やや問題。

つまり電子ブックサービスでDLできるからって本を買わないでいると、
蔵書の蓄積ができないわけで、
図書館としてそれでいいのかってことだ。
『21世紀の資本』を買う
何かと有名な新装ピエリ守山へ行って書店をのぞいていたら、
あのサイズの店にはおよそありそうもないような、
ピケティ『21世紀の資本』があった。

そのうちアマゾンで買おうかと思ってたものなので、
この際と思って、そこで買うことにした。

レジに持っていったら、係の女性ふたりが、
たぶん彼女たちがみたこともないような高い本だったのだろう、
値段の見間違いじゃないかと、驚きながら何度も確認してた。

「これは何の本なんですか?」と聞くので、
「その筋ではいま話題の本なんですよ、まさかここにあるとは思いませんでした」
「こんな高い本あるんですねえ」
とかいった話題で、レジで30秒くらい盛り上がった。

リアル書店ならではの、会話のごちそうといったところか。

さて本の中身のほうは、とても読みやすい訳文で、
翻訳のプロの仕事だと感じた。

経済学者が訳してたら、もっととっつきが悪くなってたろう。

まだ読みはじめたばかりだが、
いまのところ挫折せずにいけそうな気がする。


時間と気持ちの余裕がなくなってしまって、
ブログ更新がほとんど止まってます。
今年もあまり更新できそうにないかな。


21世紀の資本21世紀の資本
(2014/12/09)
トマ・ピケティ

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TPP知財分野で多数派を形成する方法を考えてみた
TPPの新しいリーク文書が出た。
(邦訳は@fr_toenさんのブログにある。)
2013年11月19〜24日にソルトレーク・シティーで行われた
首席交渉官会議のときの資料のようだ。

項目だけみても、関税や知財だけじゃなく、
生物多様性や気候変動まで入っていて、
別の国際機関でケンケンガクガクやっているはずの交渉を、
アメリカ基準でまとめてしまおうっていうのだから、
これが単なる経済交渉じゃなくて、
アメリカ中心の世界秩序作りだということが知れる。

ほんとうはこういうのは、全体をみて考えないといけないのだろうけど、
それはぼくの頭ではできないので、
関心のある知財に限って、
どうやったら日本が多数派を形成できるか考えてみた。
(おまえ、そんなことしている場合か!という罵声が飛んできそうだが。)

元データは上記のリーク文書にある表とする。
ただし、この表自体がかなり単純化されたもので、
実際の交渉はもっと複雑怪奇なものなので、
しかもいまの状況はもう変わってしまっているだろうから、
まあ、交渉官の苦労を知るための、お遊び程度にみてほしい。

まず、知財分野に限って、各国のポジションを主成分分析してみた。
第2主成分までの累積寄与率は72.6%ある。
(手法の詳細は、いまは省く。)

TPPIP_PCA.jpg

一見してわかるのは、アメリカとオーストラリアのぶっ飛びぶりである。

でも、これら2国を除くと、
ほかの10カ国は、けっこう固まってるんじゃないの?とみえる。

日本といちばん立場が近そうなブルネイ、ベトナムとの相違を
@fr_toenさんの表でみてみると、
「特許:特許性クライテリア」(BN,VN:反対; JP:保留)
「特許:新利用への保護拡大」(BN,VN:反対; JP:保留)
「著作権:ISP(チリ提案)」(BN,VN:賛成; JP:保留)
「商標:匂いの商標の導入」(BN,VN:保留; JP:反対)
「地理的表示:他の条約で認められた……」(BN,VN:反対; JP:保留)
「地理的表示:翻訳された地理的表示の……」(BN,VN:反対; JP:保留)
「地理的表示:地理的表示の存在が……」(BN,VN:反対; JP:保留)
となる。

それが日本にとってどうかということは置いておいて、
どちらかが保留にしているこれら7イシューで
ブルネイ、ベトナム、日本が歩調を合わせたら、
知財に関しては3カ国が団結できることになる。

さて、乱暴にもそういうことができたとして、
つぎに立場が近そうなのはチリ、マレーシアになる。

「地理的表示:ブランドを通じた商標の保護」(CL:賛成; BN,VN,JP:反対)
「執行:新刑事法要素」(MY:賛成; BN,VN,JP:反対)
と主張が対立するので、これらをまとめるのは、ちと難しいかもしれない。
けど、マレーシアに折れてもらえたら4カ国がまとまり、
「地理的表示:ブランドを通じた商標の保護」(CL:賛成; BN,MY,VN,JP:反対)
という構図になる。
このイシューでチリにも折れてもらえたら5カ国がまとまる。

そうすると次に近いのはメキシコで、その相違点は、
「著作権:技術的保護手段」(MX:賛成; CL,BN,MY,VN,JP:反対)
「国内法の扱い:TRIPSの……」(MX:保留; CL,BN,MY,VN,JP:賛成)
となる。

この2イシューでメキシコが折れて、
はじめて半数の国が一致という情勢ができる。

ごく単純化された表のうえで考えているだけなのだが、
ここまででも実現は限りなく難しそうだ。

結局のところは、この交渉は参加国が多いうえに、
意見の違うイシューが多すぎるのだ。

なんだかんだいっても、
「おまえの国は、誰が守ってやってると思てんねん、おら〜」
的な、パワーバランスが、最後にはものをいうのだろう。

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