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TPPと著作権 これから起こること、米国議会のちゃぶ台返しはあるか
TPP交渉の著作権部分について、2月2日の日経新聞で、保護期間を70年にする方向で調整に入ると報道があり、2月11日のお昼のNHKニュースのトップニュースで、非親告罪化を導入する方向で調整に入っていると伝えられた。

内容はリーク文書通りであり、多くのひとが予想していたことであり、たいして驚きもなく、誤報を疑う根拠もない。しかしこうも予想通りの流れがみえてくると、米国のいうことを聞くだけなら誰でもできるぞと思うひとも多いだろう。これだけ譲って代わりにいったい何を勝ち取っているのか、それがさっぱりみえてこないのが問題だ。

NHKの報道では、営利目的などの著作権侵害は原則として非親告罪化するが、適用範囲については各国に裁量の余地を残すということで、日本も受け入れたという。だが、ちまたで心配の声があがっている同人誌販売などは、営利目的とみなされうるものなので、非親告罪化の原則が適用される覚悟をしたほうがよい。

ちなみにこれまでのリーク文書で、非親告罪化は「コマーシャル・スケール」の侵害に限るという議論があったのは知られている。しかし「コマーシャル・スケール」をどう定義するかについては、各国の意見がわかれていた(邦訳は@fr_toenさんのブログ第QQ.H.7条)。非親告罪化の適用範囲に裁量の余地が与えられそうだから、日本は「コマーシャル・スケール」すなわち「営利目的」を独自にぐっと狭く解釈してクリアできるかもと考えたのだろう。

ところが、それは米国(すなわちステーク・ホルダーである米国大企業、著作権の場合はディズニーなどハリウッド映画産業)が許さず、TPP妥結後に「ちゃぶ台返し」にあう危険性がありはしないかと、ぼくはみている。それは米国議会での「承認手続き」のことである。「承認手続き」とは、FTA交渉で妥結した内容にかかわらず、相手国の国内法や規制緩和が米国議会が認める水準に達していない場合に、米国は協定を発効させないことができるものだ。つまり、妥結した交渉テキストに沿うと考える国内法改正を相手国がしたところで、それが米国議会の要求を満たすものでなければ協定は発効しないし、再交渉して他国の法改正に干渉することも辞さない。より詳しいことはTPP: NO CERTIFICATIONのページ(7番)に情報がある。そこにある情報のウラは完全に取ってはいないのだが、考えさせられる内容を含んでいるのでぜひ読んでみて、みんなで真偽のほどを調べてみてほしい。

つまり、「承認手続き」の段階で、米国がほんとうにどこまで「コマーシャル・スケール」の解釈の独自性を認めるかが問題だ。この点について2013年のリーク文書中での米国の要求は、何らかの価値あるものの受取(期待を含む)は「コマーシャル・スケール」とみなすという、たいへん厳しいものだった(第QQ.H.7条およびその脚注あたり)。これだと同人誌1冊でも売ろうとするだけで(実際売ってなくても)引っかかるだろう。これがハリウッド映画産業の要望により近いものなのだとすると、日本がそれを緩く解釈しようとしたら、それなりのプレッシャーを受ける可能性がある。

とはいっても、オバマが求めているファスト・トラック(TPA)法案が通れば、議会の「承認手続き」段階での修正要求など心配しなくてもよいのではと思うかもしれない。TPAとは、政権が結んだ協定を議会が一括・無修正で承認することである。この点について、先に紹介したTPP: NO CERTIFICATIONは、たとえファスト・トラック権限が大統領に与えられても、米国議会はTPPの最終条文の変更を要求できると警告している。「承認手続き」は政権が結んだ協定の「修正なしの承認」か「否認」かを議会が選択できるものだ。いわばTPAがあれば交渉結果はオール・オア・ナッシングになる。逆に言えばTPAがなければ交渉テキストは妥結後であってもいくらでも変更可能とするのが米国の考え方で、この点は日本とは大きく違う。だが、米国の政権としてはせっかくまとめた交渉を議会に否認されてはたまらない。相手国の国内法改正や各種の措置が多くの議員(つまり彼らへの献金者である大企業や圧力団体)を納得させられないと悟ったら、TPPの再交渉という事態も予測できる。米韓・米コロンビア・米パナマFTAをめぐる、TPA、再交渉、議会承認のゴタゴタについては、JETROのレポート(14ページあたり)を参照。

今後の注目点としては、まずはTPA法案が米国議会で通るかどうかである。これについては、TPAを求めるオバマに対して身内の民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員(前職はハーバード・ロー・スクールの教授で、ウォール・ストリート選挙運動の理論的指導者のひとりとされる。このひとには次期大統領候補の呼び声もある)らが反対し、両院で多数派をしめる共和党のオリン・ハッチ上院財政委員会委員長(このひとは、著作権侵害を誘発するおそれのある機器の製造・譲渡に刑事罰をつけようとして失敗したことがある)らが推進を表明する、わかりにくい状況が生まれている。まあ、議員の独立性が高いという点では、ある意味健全なのかもしれない。とくにウォーレン議員はTPPの秘密交渉を批判していたし、最近はISDS条項に懸念を表明するなど、その主張はまっとうだと感じている。

国内の動きとしては、もし日米交渉がまとまるようなことがあれば、TPP本体の行方如何にかかわらず、著作権保護期間の70年への延長、非親告罪化〔法定賠償金もか)の流れが一気に具体化していくだろう。これらはすでに米国との約束で決まったこととして、問答無用の改正が、審議会を経ない議員立法でされる危険性が高い。そうさせないためには、あるいはよほど変な方向に行くことを阻むためには、いまから議論を盛り上げていかないといけない。保護期間ならば登録した著作物だけを70年に延長できることにする、非親告罪化は軽微な侵害は問わない、累犯に限る、デッドコピーに限るなどの細かなルールメイキングは可能である。また、近年の審議会で権利者団体によってつぶされたフェアユース導入を再度考え直すなど、総合的なバランスを取った改正にしないと、著作権法は極めて危険な文化・情報統制法に成り下がってしまうだろう。それから、同人の世界がつぶれてしまうよという議論はおそらく、対米国には無効だろう。なぜなら、米国の映画産業にとっては日本製マンガ・アニメは競争相手であり、その底辺を支える同人界などつぶしてしまって、米国製の映像娯楽だけを消費してもらいたいのだと邪推しても、あながちおおはずれではなかろう。その証拠に、フェアユースを入れろという要求を米国は決してしない。

それにしても、文化にかかわる法律の方向性を外国との秘密交渉で決めてくるという手法は、どう考えてもおかしい。その点は繰り返し主張したい。しかも、70年保護も非親告罪化も数年前の国内議論で導入を見送った経緯のある、いわく付きの条項だ。著作権を譲って何を得たのかもはっきりしないようでは、もはや交渉ではなくただの追随だといわれてもしかたあるまい。
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電子ブックサービスと図書館の蔵書
Intellectual Property and Free Trade Agreements
in the Asia-Pacific Region

という、14,000円もする本が出ていた。

近頃の英語の学術書によくある値付けとはいえ、
高すぎると思ったけど、
新しい本のせいか、まだどこの大学図書館にもないみたいだし、
この辺のことはちゃんと勉強したいと思って、
自腹を切ってamazonで買った。

届いた本のSpringerのロゴをみて、
あー、やってしまったと思った。

ぼくの所属機関はSpringerのeBookを契約しているので、
ここの本のPDFは個人負担なしで手に入るのだった。

案の定、eBookにあって、PDFも入手できた。
iPadに入れたら紙の本より軽いし、全文検索もできる。

いい世の中になったとは思う半面、
電子ブックで入手できる本は、
図書館は買わなくなってきていることが、やや問題。

つまり電子ブックサービスでDLできるからって本を買わないでいると、
蔵書の蓄積ができないわけで、
図書館としてそれでいいのかってことだ。
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