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TPPと著作権:韓国著作権局インタビュー
かねてからの念願だった、
韓国著作権局(KCC)を訪問し、
FTAにまつわる著作権法改正の影響について、
インタビューをしてきたので報告したい。

KCCは韓国著作権法第112条に定められた組織で、
著作権にまつわる、いろいろなことを担当している。
日本にはこれに相当する組織はなさそうなのだが、
文化庁著作権課やCRICの仕事の一部を包含したような、
100名弱のまあまあ大きな組織になっている。

もとはソウルにあったのだが、
政府の首都機能分散政策の一環で、
2013年に韓国南部、
プサンからバスで1時間ちょっとの地方都市
ジンジュ市に移転している。
ソウルには教育部門が残るだけだという。
多くの人が単身赴任で、
ソウルまで高速道路で4時間半かかるという。
組織ごと島流しのような待遇が気の毒で、
職員のみなさんは家族への説明がたいへんだったろうな。

まあ、それはさておき、韓国は日本でいま騒がれている
TPPにまつわる著作権3点セット
(保護期間延長、非親告罪化、法定賠償金)を、
韓国ーEU(2010年署名、2011年暫定発効)と
韓米FTA(2007年署名、2012年発効)のからみで
すでにやっている。
その経験から学びたいというのが、インタビューの趣旨だった。

インタビューは韓日の通訳を通して行った。
ここに書くことはわたしと通訳の理解力の範囲内でのことであり、
その正確さは保証できず、傍証のない部分もあるので、
くれぐれもそのつもりで。

まず、ふたつのFTAがらみで大問題になったのが、
保護期間延長と、一時的蓄積(キャッシュ)に複製権を認めることだった。
それはもう、たいへんだったと担当者はいう。

保護期間延長については、
まず韓ーEUのFTAに入り、
同様のことが韓米FTAにも入った。

日本の事情とは違って、業界団体が延長に積極的だったわけではないという。
少なくとも「もう決まったこと」と、
あきらめることでもなかったそうだ。

国民への説得のポイントはふたつあった。

第1は、将来的な国際収支にプラスになるということ。
本当にそうか?とも思うが、
それだけK−POPなどの輸出に
50年後も自信があるということか。

第2は、すでに著作権が切れているものは延ばさないこと。
適用の不遡及は当然のことなので、
これが説得ポイントだったというのは少し妙に思えた。

また、両FTAでは協定発効から延長実施まで2年の猶予期間が認められた。
この猶予期間を延ばす交渉をしたそうだが、
うまくはいかなかったそうだ。
そしてその2年間にヘミングウェイやヘッセの権利が切れて、
延長のインパクトを和らげられるというロジックも使ったそうだ。

著作権の国際収入は、FTA全体の1%くらいなので、
国家的には大きな問題にならないともいった。

デジタル・アーカイビングへの影響については、
韓国では2000年代なかばの法改正で、
著作権の残る所蔵資料をデジタル化する権利が
すべての公立・大学図書館に認められているので
影響はないとの意見だった。
(国立でなくても配信までできるのかは聞きそびれた。)

孤児作品対策としては、
裁定制度を使いやすくする方向で考えているとのことで、
それは日本とおなじ。

一時的蓄積(キャッシュ)に複製権を認めることにも激しい反対があったが、
適法な利用にともなうキャッシュは免責することで乗り切ったらしい。
ただ、適法か違法かユーザーが認識できない場合があり、
その点はあいまいさが残る。
一般的には、私的使用の場面では問題にしないという
共通理解があるとのこと。

非親告罪化については2段階の改正があった。
最初は2006年改正で、営利かつ常習性のある侵害を非親告罪にした。
これはFTAとは関係なく、世論の高まりを受けてのこと。
2回目はFTAにともなう2011年改正で、
商業的規模の侵害を非親告罪にした。
商業的規模とは、営利のためか、
あるいは常習性のあることをいい、
100万ウォン(10万円)以上の被害という基準もあるらしい。
ただ、100万ウォンの基準は明文化されたものではないともいっていた。
(このあたりは、少し理解が及ばなかった。)
(2016.2.2一部修正)

つぎの点が重要だ。
著作権侵害を警察が独自に動いて立件した例が、
2013年には約25,000件あったという。
(2016.2,2一部修正)

にわかに信じられない衝撃的な数字だったので、何度も確認したのだが、
警察独自の活動による立件だと、担当者はいった。
仮に通報を受けての立件が混じっていたとしても、
日本とくらべて対人口比でみても、ケタ違いに多い。

ここの情報によると、日本での著作権法違反の検挙数は、
2013年で240件に過ぎない。
韓国の人口は日本の半分以下の約5000万人だ。

どのくらいの勢いで増えたのかは聞いていないが、
日本の近い将来もそうなる危険性を感じた。

ちなみに、韓国で立件されたもののうち、
起訴されたものが約2,800件で、
ほとんどは略式起訴による罰金刑。
審理まで進んだものが約80件、
実刑になったのが1件。

(ここからは、あとで通訳さんに調べてもらったこと)
韓国では著作権者と関係ない法務法人(ローファーム)が、
侵害者をみつけては警察に通報するぞと連絡し、
「合意金」を要求するケースが増えている。
「合意金」の相場は、相手が小学生なら50万ウォン(5万円)、
大人だと100万ウォン(10万円)だそうだ。
いわゆるコピーライト・トロールで、
権利者でもないひとの「脅し」が現実味を持つのは、
非親告罪だからこそだ。
(2016.2.2一部修正)
(ここまで、あとで通訳さんに調べてもらったこと)
(2016.1.29追記:この種の「合意金商売」は、
著作権者やその代理人がしている場合も多く
非親告罪のせいばかりではないこと、
軽微な侵害では起訴されないことがあるのに
事情に詳しくない若者が合意金を支払ってしまうこと、
警察が合意金支払いを促して問題になったことがあること、
こうしたことに巻き込まれて若者が自殺したケースがあること、
などを張睿暎氏よりお教えいただいた。)


ちょっと脇道にそれるが、
日本では違法ダウンロードがすでに刑事罰化されているので、
これがTPPで非親告罪になれば
日本ではもっとひどいことになるかもしれない。
日本で刑事罰化されたときには、これは親告罪だから大丈夫という
言い訳を政治家のみなさんが盛んにしていたことを忘れちゃいけない。

韓国の話にもどそう。
あちらではwebhardでのファイル公開やp2pの利用者が多く、
ユーザーが意図せず違法アップローダーになってしまうことがある。

それから、なるべく刑事事件ではなく民事に誘導しているとか。
(通報があったときに、なるべく民事で争ってもらうようにする、の意か。)

法定賠償金制度のトロールへの影響も気になっていたのだが、
アメリカのように上限額と下限額を決めているのではなく、
韓国は上限額を決めただけなので影響ないという。
実際の裁判では、実損害額の賠償しか認めていないそうだから。
(このあたりは、日本が参考にできるだろうか。)

フェアユース規定は、FTAによる法改正のときに導入した。
FTAでは保護ばかり強くなるので、
利用も強くしないとバランスが取れないという判断が尊重された。

フェアユースを推進したのは、KCC自身と、
「進歩ネット」(当時は別名称)という市民団体だった。
後者は日本でいえばMIAUだろうか?(がんばれ、みゃう)。
KCCは主として法の専門家集団の立場から、
フェアユースの必要性を訴えたそうだ。

考えてみれば、KCCのように公的な立場から
法律的な判断をいえる機関が日本にはない。
文化庁は役所だし、
CRICには権利者団体の資金が入っているから
公的とはいいきれない。

フェアユースの実際の運用を聞いてみると、
やはりまずは個別制限規定で判断され、
それでカバーされないときにフェアユースで争うことになる。
フェアユースかどうかが問われた裁判は、まだないそうだ。

知り合いの韓国人研究者に聞いても、
フェアユースが入ったことはほとんど認知されていない。
制度の定着はまだまだ時間がかかりそうだ。

最後にACTAであるが、
メニューがだいたいTPPに入っているので、
署名以後の、担当者の関心は落ちているとのこと。
今後、批准する予定もないそうだ。
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