<<03  2017,04/ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  05>>
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)はホントの所、何が問題なのか
「偽造品の取引の防止に関する協定」(ACTA)については、
過去のエントリでも触れてきた。

日本ではわからないACTA:欧州各国での抗議デモについて
ACTAに対するEUの懸念とは

今週4日にもEU議会でACTA批准が否決されそうで、
もしそうなったらこの問題含みの協定にとって、
ひとつの大きな節目になると思うから、
ACTAの問題点について、現時点での考えをまとめておく。

ぼくはやはり、徹底した秘密交渉の手法を取った、
プロセスのことは大問題だと思う。

ことに、ネットはひとびとの結びつきを決定的に変え、
統治のあり方そのものを変えてしまうかもしれないメディアであるので、
それを規制する交渉は、市民に対して徹底的に透明でなければならない。

その認識が、交渉の当事者に、またあえていえばマスコミにも欠けていた。

EUでのACTAに対する批判をみていると、
透明性の欠如を問題視したものが、とても多い。

EUのように、国民国家の枠を越えた統治の仕組みを作るには、
市民の意見を醸成し、それを政治に反映させるためには、
「ネットの自由」が確保されていることが、極めて重要。

そこを市民も議会もわかっているから、
どこかでこっそりまとめた協定で、しかもネット規制を含んでいるものを、
すんなりと受け入れるわけにはいかないのだ。


さて、この協定は日本ではいまだにほとんど報道されないのだが、
日本が提唱して進めてきた交渉で、
ネットがらみのことでいえば、
基本的には”概ね”現在の日本水準の規制を、
締結国に要求するものといっていいだろう。

だが、条文の日本語訳が公表されたのはすでに調印したあとで、
さらにいうなら、国会での批准を求めることを閣議決定したあとだった。

現在は日本語訳もネットで公開されているが、
文章は難解であり、個々の条文が何を意味しているのか、
説明がまったくなされていない。

ACTAをめぐっては、これに強く反対する方々からの、
さまざまな危惧や憶測がネット上を飛び交っている。

なかには少々心配しすぎではないかと思うこともあるが、
政府からの説明が何もないなかでは、
それは心配しすぎだと、言い切れる自信はまったくない。

ACTAへの危惧や憶測に答える責任は政府にあり、
そして政府以外にはない。

そんななかで、ぼくはちょっと視点を変えて、
ACTAでは何が語られていないかを、3点述べておきたい。

第1に、ACTAでは文化が語られていない。
これは文化の発展に寄与することを目的とする、
日本の著作権法の精神とは、まったく相容れないものである。
文化に関心がないのなら、著作権をいじってほしくはない。

第2に、ACTAでは人権が語られていない。
侵害に対する刑事上の執行など、
人権にかかわる規定があるにもかかわらず、
それへの配慮はなく、ひたすら産業を保護するものになっている。

第3に、「表現の自由」以外の自由が語られていない。
「表現の自由」は申し訳程度の記述はあるが、
それを尊重することを大きく打ち出してはいない。
通信の秘密や個人情報保護への配慮も弱い。
さらにこれから重要になってくるであろう、
「ネットでひとびとがつながり、情報をやりとりする自由」
については、むしろそれを規制する思想が感じられる。


ぼくはACTAを日本が批准して発効したとしても、
今すぐに大きな変化が訪れるとまでは思っていないが、
将来現れるであろう影響、
それもマイナスの影響は大きいと考えている。

ACTAは概ね現在の知財保護思想と水準を肯定しているため、
知財保護のあり方をネット時代に合わせて大きく変える必要が生じたとき、
ACTAが足かせになることは、じゅうぶん考えられる。

そのとき、ACTAは変革を求めない勢力、
すなわち既得権益者や政権にとって、
有力な武器になるだろう。
「国際協定で決まっているから」
という決まり文句で、
変革を妨げることが可能になる。

それは必ずや、来るべき未来の到来を遅らせ、
社会全体の厚生を下げることになるだろう。


それからもうひとつ。
協定によって誕生するACTA委員会によって、
運用や協定そのものが自律的に変化する危険性がある。
ACTA委員会は、たぶんまちがいなく、
市民の意見よりも既得権益者の利益を優先し、
しかも民主的に選ばれた政権が、
実質的にどこまでコントロールできるかの保証もない。
むしろそこで決められたことに、
国内法が従わされるような状況が生まれる。

それを民主主義の危機といわずして、何だろう。

まあ、それをいえばTPPでささやかれている知財保護は、
ACTAよりももっときつい。

TPPもACTAと同様に、秘密交渉で進められているのは周知のとおり。

ACTAをすんなり通すことは、
民意を反映する必要のない秘密交渉の、
成功例を重ねてしまうことになり、
TPPのことを考えると、それはまずいだろうと思う。

もっとも、EUがACTAを否決すれば、
秘密でやってきたことが、最後にはすんなりとはいかなかったことになり、
こういう手法の限界を示すことができる。

もちろん、それはACTAを主導した日本外交の大失点になるのだが、
報道されることがなければ、そのことに気付く国民は少ない。

(ACTA批准については4月17日に国会に提出され、参議院の先議になっていますが、国会情勢が影響してか、どの委員会にも付託されていない状態が続いています。)

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

「偽造品の取引の防止に関する協定」(ACTA)については、過去のエントリでも触れてきた。日本ではわからないACTA:欧州各国での抗議デモについてACTAに対するEUの懸念とは今週5
プロフィール

やまだしょうじ

Author:やまだしょうじ

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
FC2カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
407位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
社会科学
16位
アクセスランキングを見る>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。