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ACTAについて本に書いたことを転載
『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』という本を昨年の9月に出版しました。そのなかで書いたACTAに関する部分を、人文書院さんの了解を得てここに転載しておきます。




第6章 著作権秩序はどう構築されるべきか
「秘密主義へ」の節より抜粋

 この文章を執筆している二〇一一年四月時点で進行中のことに、日本が主導する「模倣品・海賊版拡散防止条約」(ACTA)(補注・現在の名称は「偽造品の取引の防止に関する協定」)締結に向けた動きがある。この条約はもともと、「知的財産推進計画二〇〇五」に書かれ、当時の小泉首相が〇五年のグレンイーグルス・サミットで提唱したものだ。ACTA締結に向けた集中的な協議を開始することが、〇七年一〇月に経済産業省からアナウンスされたものの、その後の協議は徹底的な秘密主義のもとに置かれた。国民生活に深く関係する条約なのに、外交機密の名のもと、国民の誰にもその内容を知らせないようにしながら交渉が進められたのだ。

 ACTA交渉の秘密主義については、各国の識者から批判が寄せられた。そしてドラフトが二〇〇八年五月から順次ウィキリークスに流出するにおよんで、その内容に対する批判が巻き起こった 。原案が正式に公表されたのは、交渉が最終段階に近づいた一〇年四月になってからだった。

 二〇一〇年一〇月の大筋合意文書によると全体は六章からなり、「知的財産権を執行するための法的な枠組み」「国際協力」「執行実務」「制度上の措置」などが規定されている。内容をみると「デジタル環境での知的財産権の執行」について、踏み込んだ合意がされている。それによると、コンテンツ保護技術を回避するコンピュータ・プログラムや機器、サービスが提供されることがないよう、条約締結国は国内法を整備しなければならない。さらに重要なことに、ここでいうコンテンツ保護技術には、コピー・コントロールだけでなくコンテンツの再生を許可するアクセス・コントロールも含むと書かれてある。第四章で述べたように、現在の日本の著作権法では「技術的保護手段の回避」による複製を禁じているが、それはコピー・コントロールのことであってアクセス・コントロールは含まない。

 フリーソフトウェア運動を推進してきたアメリカのフリーソフトウェア財団(FSF)は、「ACTAはフリーソフトをおびやかす」と抗議声明を発表した 。FSFはまず、ビットトレントなどのP2Pファイル交換ソフトが取り締まりの対象になることを心配している。P2Pはコンテンツの違法配信にも使われているが、フリーソフトの合法的で強力な頒布手段にもなっているからだ。FSFはまた、リナックスなどのフリーの基本ソフトが動いているパソコンで、DVDやブルーレイに入った映画など、暗号化されたメディアを再生することができなくなるとしている。これらのメディアを再生するフリーソフトを作ることは、アクセス・コントロールの回避だとされる心配があるからだ(補注・複製をしない再生のみのアクセスは合法なので、こういった当初の心配はしなくてもよいようである)。そしてFSFは声明文の最後を、「それ[ACTA]は監視と疑いの文化を創り出し、フリーソフトを制作するのに欠かせない自由が、創造的・革新的で興奮に満ちたものではなく、危険だ、脅威だとみられることになる」と結んでいる。

 日本はACTAの提案国なので、締結後をにらんだ法改正にすばやい動きをみせている。「知的財産推進計画二〇一〇」には、アクセス・コントロールの回避を規制するよう法改正をすることが盛り込まれた。また、二〇一一年一月の文化審議会著作権分科会の報告書では、保護手段を「技術」ではなく「機能」で評価し、DVDの暗号はアクセス・コントロールとコピー・コントロールの両方の「機能」を持つので規制の対象にすべきとされた 。もちろん、報告書ではACTAの大筋合意内容がしっかりと言及されている。秘密裏に交渉されてきたことが、著作権法改正の所与の条件になっている構造がはっきりとみえる。

 ACTAに限らず、貿易上の障壁を取り除く「自由貿易協定」(FTA)や「経済連携協定」(EPA)のような外交交渉の結果が、各国の著作権法を変える力になっている。知財の保護水準の低さがその国との交流の阻害要因とみなされ、より高い水準へと法制度がそろえられることになるからだ。アメリカはFTA・EPA交渉によって、相手国の知財関連法の規制を強くする戦略を取ってきた。たとえば、二〇〇七年に妥結した米韓自由貿易協定によって、韓国は著作権法の保護水準をアメリカ並みに高くすることになった。

 二〇一一年四月現在、日本はEPAのひとつである「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)に参加するかどうかの決断を迫られている。TPPにはアメリカが参加しているので、その一員に加わるために著作権の保護期間をアメリカ並みに七〇年にする圧力が、ふたたび高まることが予想される。すでに述べたように、保護期間延長は審議会の場を越えた国民的な議論にまでなって見送られた経緯がある。その結論が外圧によってかんたんにひっくり返されることのないよう、注意を払わなければならない。




日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか
(2011/09/15)
山田 奨治

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