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大英博物館の春画展に来ています
CIMG6522.jpg

大英博物館に来ている。

目的は3日からはじまった春画展、
Shunga: sex and pleasure in Japanese art と
それに関連するシンポジウムに参加するためだ。

勤め先の研究所が所蔵している作品も、
たくさん出展されている。
おなじ職場にあるとはいっても、原物をみる機会はまずない。
はるばるロンドンで、ご対面というわけだ。

春画は、現代の表現規制を考えるのに、いい材料を与えてくれる。

師宣、春信、歌麿、清長、北斎、国芳……。
名の通った絵師はみな、その全盛時代に、
表の絵を描く一方で、
裏で春画も描いていた。

しかし、日本の美術史研究の主流は、
春画を恥ずかしい歴史として、
その存在をなかったことにしてきた。

ここ20年、少しずつ風向きが変わってきたそうだが、
春画への偏見はまだ根強い。

大英でやった日本関係の特別展は、
日本の某国立博物館に巡回する慣わしがあるそうなのだが、
今回のは日本側が断ったそうだ。

関係者がずいぶん努力をしているようだが、
日本でこれをやってくれる博物館・美術館は、まだみつからない。

また、これくらいの大規模の日本関係の特別展が大英であるときには、
日本大使が来て開会の挨拶するものなのだそうだが、
今回は大使は来なかった。

CIMG6531.jpg

こんどの春画展のすばらしい点は、
いままでみたいに絵だけを好奇の視線でみるのではなく、
詞書きを翻訳して、場面の説明をしていることにある。

同僚の専門家によると、春画は日常の性を題材にした、
「あるあるネタ」でクスッと笑ってしまうのが、
本来の楽しみ方なのだそうだ。
だから春画は「笑い絵」と呼ばれていた。

中国や日本の古典からの引用もふんだんにあって、
そうとう教養がないと、理解しきれるものではないようだ。

とはいえ、いかにも保守的そうな大英博物館で、
これを実現した関係者の努力はたいへんなものだったろう。

それでも、展示から排除せざるを得なかったものが、2種類あったという。
ひとつは性暴力の描写。
もうひとつは場面に子どもが登場するもの。

性暴力の場面を描いた春画は、極めて少なく、
専門家に聞いても5〜6作品しか知らないとのこと。
だから、これは削っても大勢に影響はない。
(実際には1点出ていた。)

だけど、子どもが登場する春画は、たくさんあるそうだ。
といっても、それは夫婦の情事をのぞきみしたり、
無邪気にじゃれついてきたりするような表現で、
「こんなこと、あるよなあ」と笑ってみるものであって、
子どもが性的虐待を受けているような絵はないとのこと。
それを排除してしまっては、春画の全体像をみせる展示とはいいがたくなる。
(実際には1〜2点、子どもが描かれたものが出ていた。)

シンポジウムの場で、「それは自己検閲ではないか」と、
主催者に水を向けてみた。
彼は「自己検閲だといえばそうだ」とあっさり認めたうえで、
「性の場に子どもがいる表現は、大英博物館の主流の観客には受け入れられないと判断した」
「このことについては、相当に議論を重ねた」
「図録ではこの問題も論じているので、読んでほしい」と答えた。

情事といっしょに子どもが描かれているだけでダメというのは、
どうも感覚的に理解不能なのだが、
ここの社会では、子どもを性と少しでも関連づけることに、
相当に根強い拒絶反応があるようだ。

そのあたりの文化摩擦が、
現代のマンガ・アニメの表現規制の問題と直結しているように思う。

いずれにしても、大英で春画を取り上げたことで、
NHKをはじめ、日本のメディアもかなり関心を持ったようだ。
西欧のお墨付きに弱いこの体質は何とかならんものかとも思いつつ、
日本に巡回するきっかけにでもなればいいな。

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

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